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理工学部HOME > 学問のすゝめ > 新しい磁性体の可能性を探る。

学問のすゝめ

新しい磁性体の可能性を探る。

佐藤 徹哉 (物理情報工学科 教授)

磁性体(磁性を持つ物質)はハードディスクなどの記憶媒体や電気自動車のモーターなど多方面で利用されていることは良く知られています。磁性は原子や電子の一つ一つが微小磁石であることに起源があり、磁性体の中には、これら微小磁石が平行に揃う強磁性体(磁石にくっつく磁性体)以外に、反平行に揃う反強磁性体、ランダムな方向を向くスピングラスなどがあります(図1)。このように多様な磁性を示す物質が存在するにもかかわらず、これまで磁性体を応用する場合、素性の良く分かっている強磁性体の機能を向上させることが基本で、利用される物質がある程度制限されていました。

佐藤研究室では、磁性の原理を基本から考えることで、磁石にくっつかない物質を人工的に強磁性体に変化させる手法や、強磁性体以外の磁性体の利用の可能性を研究して、新しい磁性体の可能性を探っています。

図1.色々な磁性体における原子の微小磁石の配列。強磁性体(a)では微小磁石は1つの方向を向き、反強磁性体(b)では交互に反対方向を向き、スピングラス(c)ではランダムな方向を向く。


皆さんは単一の元素からなる物質で室温において強磁性を持つものがいくつあるかご存知でしょうか?室温程度で強磁性を失うガドリニウムという金属を除くと、図2(a)に赤色で示すようにたった3つしかありません。これはちょっと少なすぎますよね。それならば、何らかの方法で強磁性を示す物質をもっと増やしてしまおうと考えることは自然なことではないでしょうか。そこで私たちが考えた磁石にくっつかない物質を強磁性体にする一つの方法は、物質をナノサイズまで小さくすることでした。佐藤研究室では2003年にPdという磁石にくっつかない金属をナノサイズにすることで、粒子表面に強磁性が発現することを初めて見つけました(図3)。これは、物質表面で電子のエネルギー状態が変化して、金属中の電子が運動しにくくなることに起因しています。この発見ののち。世界中でナノサイズにおいて強磁性を示す色々な物質が見つかりました(図2(b))。さらに、この現象を良く考えてみると、物質に電界を加えたり、光を照射したりすることで新しい強磁性体を生み出すことができることが分かります。現在私たちは新しい強磁性体を創出すための色々な方法を提案して、これにより強磁性を示す物質の範囲をさらに広げることを目指しています。

図2.これまで室温で強磁性を示すことが知られていた元素(a)と2003年以降にナノサイズにおいて強磁性が発見された元素(b)。

図3.約10nmのサイズを持つPdナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真。粒子は多面体構造を持ち、その四角の面 [(100)面] に強磁性が現れると考えられる。

他にも、スピングラスというランダムな方向に微小磁石が向く磁性体が示す不思議な記憶現象に注目しています(図4)。スピングラスは1つの領域に何種類もの情報を記憶できたり(多値記憶)、少し情報を与えると情報を思い出したりする(連想記憶)、人間のような記憶をします。これは微小磁石の間に働く力が複雑に絡み合って、微小磁石の方向がゆっくりと安定な状態に近づくプロセスと関係するもので、この現象の解明は統計物理学の大きな課題の一つとなっています。うまくこの現象が利用できると、まさに人間のように記憶する1歩進んだ記憶素子ができるかも知れませんね。

図4.スピングラスでは微小磁石はランダムな方向を向くが、その多様な配列パターンはそれぞれ1つの情報と考えることができる。この配列パターンが多値記憶や連想記憶と関係する。

以上ご紹介しましたように、私たちは量子力学や統計物理学を基礎として、これまでの常識的な観点とは異なった立場から物質の(磁性体としての)ポテンシャルに注目して新たな物質の世界を開拓したいと思って研究を進めてきました。そして、物質が時々見せてくれる様々な姿に魅了されています。このような魅惑的な物質世界の広がりが我々の生活をさらに豊かにしてくれるものと考えて、今後も研究を続けていくつもりです。

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