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理工学部HOME > 学問のすゝめ > コトバを科学する:言語学からのアプローチ

学問のすゝめ

コトバを科学する:言語学からのアプローチ

小原 京子 (外国語・総合教育教室 教授)

 私は理工学部では1年生から大学院生までを対象に主に英語科目を担当していますが、専門は言語学です。言語学者と聞くと、多くの皆さんは英語やフランス語などの他にも中国語、アラビア語、スワヒリ語などの様々な言語について博識を誇っている学者を思い浮かべるかもしれません。残念ながら私はアラビア語もスワヒリ語もしゃべれません。また皆さんは、日本語や英語には「正しい」コトバ遣いというものがあり、コトバの専門家・達人である言語学者はそのような「正しい」コトバ遣いを発見し、記録し、推進していく人たちを指す、と想像しているかもしれません。ですが、私は「正しい」コトバ遣いにはさほど興味がありません。かわりに私が言語学者として興味を持っているのは、「人間の持つコトバの知識とはどのようなものだろうか?」という問題意識です。言語学では近年様々な方法論が試みられるようになり、また、心理学、教育学、脳科学、コンピュータ科学からもコトバに関する多様な科学的研究がなされ、多くの興味深い成果が出てきています。

 言語学の実際の研究対象は、「正しい」コトバ遣いではなく、ある言語の話者個人が持っているその言語に関する知識の総体、つまり個人の脳・心の中にあるその言語の規則性に関する知識です。普段皆さんは、何気なく使っているコトバに規則性があることを意識していないのではないでしょうか。私達がコトバに規則性があることを意識するのは、日本語が母語でない人の話す日本語に接した時、あるいは、世代の違う人たちの話すコトバや異なる地域の人たちの方言に違和感を感じる時などです。たとえば、日本語が母語でない人が「明日に行きます」というのを聞いた時、皆さんは意味は理解できても「自分なら『明日行きます』と言うだろう」と思うことでしょう。

 私の研究で焦点を当てているのも、「日本語のネイティブスピーカーが持っている日本語の知識とは?」という問いです。単に国語辞典に記載された単語の意味と、文法書に書かれた日本語文法の知識とを組み合わせたものではなく、私達の身の回りに関する常識や文脈をも含んだものなのではないでしょうか。たとえば、「今夜のコンパ出る?」と友人に尋ねたところ「明日追試なんだよ」という返事が返ってきた際に、皆さんはその友人がコンパに出ないつもりだと理解します。「コンパ」では仲間と飲み食いを共にします。一方、「追試」の前にはたいていの人はその準備のために勉強をします。なので、「今夜のコンパ」への出欠予定を聞いた際にその回答で「明日の追試」に触れたというこは、「明日の追試に向けて今夜は勉強をするので、コンパには出られない」という返事だと、皆さんは文脈や常識を駆使して推論するのです。
 

 このように、実世界における文の意味を理解するには、その文に現れる単語の使われる文脈や常識などの背景基盤・知識を検討する必要がある、というのが私の仮説です。そのような日本語に関するネイティブスピーカーのもつ背景基盤・知識を明らかにし、豊富な例文をつけ、語彙情報資源として整理して行こうとしているのが、ここ数年来進めている「日本語フレームネット」というプロジェクトです。アメリカ・バークレーで構築中の英語の語彙情報資源「フレームネット」と連動しており、また、スペイン・バルセロナのスペイン語フレームネットやドイツ・ザールブリュッケンのプロジェクトも英語フレームネットと同じ枠組みを使っています。将来的には相互にリンクを張ることで、日・英・独・西語の複言語情報資源が構築できるかもしれません。また、最終的には日本語学習者やコンピュータの自然言語処理システムに役立つ語彙情報資源をめざしています。

 コトバの研究には言語学の他にも、心理学、教育学、脳科学、コンピュータ科学など、様々なアプローチがあります。複数の学問領域にかかわる研究は相互間の協力は難しいのですが、複数の領域の貢献により、これまでコトバの「謎」とされていたことの多くが単なる「難問」と言われるくらいにまで、かなり解明されてきました。皆さんが学問と言うものに向き合う際にも、身近なものに対する見方を変えてみること、複数の視点をもつこと、一つの学問領域にとらわれないことを、忘れないでいて欲しいと思います。

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