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理工学部HOME > 学問のすゝめ > コンピュータを利用した診断支援システム

学問のすゝめ

コンピュータを利用した診断支援システム

田中 敏幸 (物理情報工学科教授)

腫瘍の最終的な診断として、病変部の細胞の形状による病理診断が行われています。これらの診断を行うのは病理医の方々ですが、日本では特に腫瘍患者数に対して病理医数が不足しており、各症例の診断に十分な時間をかけることができないという現状があります。ベテランの病理医でも診断が難しい症例が数多く存在するので、病理医不足による診断時間の不足は、結果的に判断ミスにつながる可能性もあります。
現在、検診数が最も多い子宮癌検診では、病理診断の前に臨床検査技師(細胞検査士)によって、検体の中から腫瘍があると思われる検体のみをピックアップする処理が行われています。この処理のことをスクリーニングといいます。その他の腫瘍も含めて病理医が診断する症例数を減らすために、コンピュータと画像処理技術を使ったスクリーニングシステムの開発が望まれています。医師が診断するための付加的な情報を加えたスクリーニング装置は、診療そのものの効率化を図ることができると考えられます。

スクリーニングの対象は人間の細胞組織です。細胞は人工的な装置・部品と違い、一つ一つが若干異なった形状をしています。つまり、規格化された全く同じ形のものを見つけるのではなく、似た形状のものを見つけるという処理が必要になります。また、正常細胞と腫瘍細胞の形状のわずかな違いを判別するために有効な数値化手法も必要になります。人間はこのような判断を容易に行いますが、コンピュータには苦手な処理です。

処理の第1段階は、画質の統一です。検体をディジタルカメラで撮影するとき、その装置の設定や染色の状態でまったく違った色合いやコントラストの画像になります。コンピュータで診断するときには、これが致命的になってしまいます。そこで異なる撮影環境でもほぼ同じ画像が得られるように前処理を行います。第2段階は、細胞質や細胞核の特徴を数値化するということです。一般の人から見るとほとんど同じように見える症状でも、患部がどの部位にあるかによって診断基準が若干違う場合があります。それぞれの症例にあった特徴の数値化というのが、コンピュータ診断における一番の課題です。

最後に、特徴量を基にした悪性度の判別です。この段階では、特徴を見分けるための統計的手法の研究になります。現在では、サポートベクターマシーンという手法が、病理診断には効果的だといわれています。すでに報告されている統計処理手法だけで十分な結果が得られるとは限りませんので、有効な判別分析法の開発もこの分野の研究課題の一つです。病理診断が迅速に行われ、病気の早期発見や重症度の診断が正確になれば、その後の外科手術や治療に大きく影響していきます。私たちの研究室では、臨床で役立つ診断支援システムの開発に向けて研究スタッフ全員が努力を続けています。



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