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学問のすゝめ

医学と融合する流体力学の研究の勧め

谷下 一夫 (システムデザイン工学科教授)

 私達が病気になって病院に行くと、大きな機械が沢山あって、圧倒されるという経験を持った事がありませんか。現在では、医療の世界に理工学の先端的な技術が多く導入されて、多くの新しい医療技術が生まれて、身体に負担が少ない診断や治療を受けられるようになりました。そのような点から考えると理工学部で医療の研究をやっているのは不思議ではありません。そこで理工学と医学の分野が協力して新しい医療技術を生み出す事を医工連携と言われています。

 医工連携は欧米では40年前から行われており、医学と理工学分野の研究者が協力して、多くの医療技術の研究開発が行われて来ました。例えば、飛行機を飛ばすために進歩して来た流体力学が身体の中の血液の流れを調べるためにも使われています。つまり、流体力学が医学と融合して、新しい医療技術が生まれています。血管の手術をする前に、どのような手術方法が、最適な血流になるかを流れのコンピュータシミュレーションで確認して、手術方法を決める事も可能になっています。さらに、動脈硬化や動脈瘤のような動脈の病気の診断治療にも流体力学が活用されます。

 図1は、脳血管に出来た動脈瘤ですが、瘤内の血液の流れ方から、瘤の成長や破裂の可能性を予測できる可能性が分かってきました。このように血液循環の様子を流体力学によって解析する研究が国内外で進んでおり生物流体力学と呼ばれるようになっています。スーパーコンピュータで血液循環の様子をシミュレーションする事も実現しています。

 一方、流体力学は、今話題になっている再生医療の分野にも活用されています。図2は、血管内壁を構成している内皮細胞によって形成された毛細血管網です。写真の中央に枝のような物が見えますが、これが毛細血管網です。この毛細血管網は、血管壁(背景で、敷石のようなものが見えますが、これが血管壁の内皮細胞です)での血流による力の刺激によって、大きくなることが分かりました。つまり、血管の内皮細胞が、血液の流れを感じて、毛細血管網を大きくしようとしているのです。このような性質を利用して、再生臓器の中に毛細血管網を形成させようと頑張っています。図3は、体外で形成された肝臓の毛細胆管が胆汁を送りだすために、収縮している状況の顕微鏡写真です。

 このように流体力学は医学と融合して、新しい医療技術の開発に貢献しています。医療技術に関心を持つ高校生諸君には、ぜひ理工学部で、医工連携の研究に携わる事を勧めます。

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