新板 窮理図解

管理工学科に進んだ時点で研究者を目指そうと思われたのですか?
photo いいえ、それがまったくそうではないのです。自分が研究者になるなんて、当時は、夢にも思っていませんでした。大学3年生までは、とくに学業に熱中するという感じでもなく、塾の講師のアルバイトをしたり、バスケットやバドミントン、さらにはアウトドアサークルに入ったりして、学生生活を楽しんでいました。ちなみに、妻はアウトドアサークルの後輩です。
 学問の面白さに目覚めたのは、大学4年生のときに、都市工学とオペレーションズ・リサーチを専門に、都市空間の数理的分析を手がけてこられた栗田治先生(現管理工学科教授)の研究室に所属してからです。研究室の説明会で、栗田先生の話を伺って、知識の幅広さと社会のさまざまな問題を数理モデルを用いて分析していく力強さに圧倒され、先生の下で研究したいと強く思いました。都市や地域のように空間的な構造をもった対象に、数理的に迫っていくという先生の研究スタイルは、現在の私の研究に大きな影響を与えています。
 ただ、研究生活自体は大変な側面もありました。研究室のポリシーとして、学生が自らテーマを見つけるプロセス自体に重点を置いているためです。当時はまだ研究の入り口に立ったばかりでしたから、非常に苦労しました。結局、卒論では、鉄道駅の最適配置を駅までのアクセスに着目して分析するモデルをつくりました。いま振り返ってみると、研究としてはレベルの高い内容とは言えませんが、試行錯誤の末、苦労してテーマを設定し、ゼロからモデルをつくったという経験が、いまの自分の研究者としての原点です。振り返ると懐かしいですね。
 それから、現実のどのような構造に着目するかは人それぞれですから、モデリングという行為には、主観が入るんですね。よくモデリングはアート&サイエンスと言われます。モデルをつくる人の世界観が反映された作品性を備えているところに面白みがある。特に人間や社会の問題は、物理学の世界のように厳密な法則に支配されているわけではないので、複数の異なるモデルが共存しても良い。そんなところにも、研究の魅力を感じました。 修士のときに、シンクタンクでインターンを経験して、就職するかどうか迷った時期もありましたが、結局、もっと研究を続けたいと思うようになり、博士課程へ進学し、栗田先生に引き続きご指導いただきました。