新板 窮理図解

研究に本腰を入れ始めたのはいつ頃ですか?
 大学4年のときに、環境・分析化学系の研究室に所属したのですが、10月まで体育会バスケ部で活動していたので、本気で取り組み始めたのは修士に入ってからです。
 ただ、最初は大気の研究ではなく、湖の堆積物から汚染物質を取り出して分析機器で調べていました。ボーリングでコア(円柱形の堆積物のサンプル)を取り出すと、時系列で汚染の状況が変化していく様子がわかるのです。実際に、赤城山麓の湖へ行って手漕ぎボートを操ってコアの採取をしたりしました。
 ただ、過去の汚染状況を調べることに、しだいにもどかしさを感じるようになりました。人の健康の役に立つためには、まさに今起きていることを調べたいと思うようになり、修士の2年目くらいから大気の研究にも取り組み始めたのです。
 その後、大学教員を目指していたため、企業への就職活動はせずに、そのまま博士課程へ進みました。ただし、指導教官の先生が退官されるタイミングだったこともあり、博士課程は東京農工大学へ移りました。もっとも、主要な計測装置は都立大学にしかなかったので、その大半は農工大と都立大を行き来する日々でした。
 博士課程で研究していたのは、土壌や大気に含まれ、人体に有害とされるベンゼン環(6個の炭素原子からなる正六角形の構造)からなる化合物で、その発生源の特定や輸送経路などです。有機化合物には、主に炭素12と炭素13が含まれていますが、由来によってその比率が違います。例えば、自動車の排気ガスであれば炭素13が、木を燃やした場合であれば炭素12がやや多くなる。炭素12と13の比率を測ることで、発生源を調べるというわけです。当時は、フィールド調査にもよく行きましたね。