新板 窮理図解

やはり海外に出ることは必要でしたか?
 ええ。世界中から集まってくる優秀な人たちと議論できる環境に身を置くというのは、非常に重要でしょうね。四六時中研究のことばかり考えている研究者たちとつねにディスカッションをして、皆で考えていくスタイルを経験できたのはよかったと思います。現在の私の研究室も、プリンストン方式を踏襲しています。
 また、プリンストン大学ではランチをとりながらディスカッションすることがあり、いい勉強になりました。もちろん、日本でも学生と息抜きで飲んだりはしますが、欧米ではランチの時間やお茶の時間が研究に関するコミュニケーションの場として機能しているんですね。ですから、休憩時間というよりは、研究の延長線上の貴重な時間という印象があります。
 研究者であれば、できるだけ早めに、30歳くらいまでには一度、海外へ出たほうがいいでしょうね。

photo研究者として大切にされている信条はありますか?
 研究のアイデアというのは、ある日突然、突拍子もないところから生まれてくることはありません。1つひとつ積み重ねて、はじめて形になるものだと思います。つまり、日々、コツコツと努力をすることが大切です。もちろんうまくいかないこともありますが、がんばっていればいつか出口は見えてくるもの。そうやって何かをつかむことができれば、大きな達成感を得ることができる。実際に、研究の中でそういう喜びを感じた瞬間が、幾度かありました。それこそが研究者としての醍醐味でしょう。もちろん、研究者でなくても、社会で成功されている方というのは、皆さん努力されていますよね。
 ちなみに、慶應の学生は、スマートな人が多いという印象があります。自分でうまく進めていく能力もあるし、コミュニケーション能力もとても高い。悪く言えば要領がいいんですね。そこに努力が加われば、怖いものナシでしょう。ぜひ、そういう力を身につけてほしいですね。

休日はどのように過ごされていますか?
 よく友人たちと温泉に出かけます。先日も、福島県の岳温泉というところに行ってきました。強い酸性のお湯が特徴の温泉で、露天風呂に入って、何も考えずにぼーっとリラックスできて最高でした。後は、ときどき日本酒を飲むことでしょうか。学生たちとも、たまに飲んでストレスの発散をしています。

どうもありがとうございました。

◎ちょっと一言◎
学生さんから
どんなに忙しいときでも、困ったときには相談に乗ってくださる、真面目で頼りがいのある先生です。ただ学生を甘やかすのではなく、学生が自立できるように仕向けてくださるところは、先生ならでは。研究には厳しい方ですが、飲み会のときなどは、学生と一緒になって思いっきり騒ぐ、意外な一面もあります。

(取材・構成 田井中麻都佳)