新板 窮理図解

今後はどのような研究をしていきたいですか?
 高温超伝導の起源や生命の謎など、今現在では、さまざまな説が提唱されている問題も、何十年後かには人類にとって当たり前の知識になっている可能性が高いと思います。その時には、なぜそうなのかという、実験を裏付ける理屈が見出されていることでしょう。その理屈がわかりやすいものほど、人類にとって利用しやすく、社会に貢献することになります。
 私は、自然現象というのは一見複雑に見えても、問題をばらしていけばシンプルなものになるはずだと思っています。その「わかりやすい理屈」を世界で最初に解き明かしたいですね。
 未解明の真理を見つけるためには、自分たちにしかできない実験技術を磨くのが一番です。実験結果には、自然現象を解き明かすさまざまなヒントが詰まっていますから…。ヒントをもとにパズルを解いていくのは、とても楽しい作業です。
 実際に私は、以前に、当時としては世界最高の電場クラスのテラヘルツ光パルスをつくり、これを用いて誰も行ったことがない物質の光制御に取り組みました。また、慶應義塾大学に着任した後は、テラヘルツ周波数領域の光の偏光情報を、速く正確に調べる世界トップクラスの技術を手に入れました。これからも、世界一の技術を使って未知の物理問題を解決していきたいですね。

研究の合間はどんなふうに過ごされているのですか?
 中学時代から現在まで、アマチュアの吹奏楽団に参加してチューバを吹いています。
ちなみに、好きな曲の多くは行進曲(マーチ)です。チューバは単調なテンポしか刻まないので、よく人からは「つまらないでしょ?」と言われますが、むしろ単純なのに感動的な曲が多いということが面白い。研究と一緒で、わかりやすいものが好きなんですね。

慶應義塾大学のどんなところに良さを感じますか?
photo 先生方や事務の方々が、私のような若手・中堅研究者をつねにバックアップして積極的に売り出してくださることに、いつも感謝しています。着任したときの第一印象は、とにかく効率的な運営をして、教育も研究も、みんなで協力して最高の成果を上げていこうという意識が非常に強いことでした。とても働きやすい環境です。
また、充実した教育環境のせいか、学生さんの基礎学力および学習意欲が極めて高く、一緒に勉強や研究をするのがとても楽しい。教職員と学生の協力による相乗効果で、質の高い研究ができる環境が整っていると思います。

どうもありがとうございました。

◎ちょっと一言◎
学生さんから
うちの研究室の学生の多くは、先生の人柄にひかれて入ったといってもいいほど。とてもやさしくて、面倒見のいい先生です。学生それぞれに合った課題をつねに与えて、きちんとフォローもしてくださいます。研究室の雰囲気もとてもよく、居心地のいい研究室です。

(取材・構成 田井中麻都佳)