新板 窮理図解
理科ぎらいだった少年を変えたのは1冊の本との出会いだった。
真理を探究する研究者たちの人間味あふれる姿に共感し、研究者の道へ。
競争が激しい研究者の世界で、
過去の偉大な研究者や海外留学で出会った研究者たちがどのように振る舞い、
どのように研究テーマを見つけ、研究を続けてきたかを見聞したことが、
今も、渡邉さんの人生に大いに役立っているという。

どんな幼少期を過ごされたのですか?
 東京都中野区にて、電気工事業を営む両親の長男として生まれました。実家が電気屋だったため、ワープロやパソコンなどが身近にある子供時代を送り、早くからコンピュータ・プログラミングなどに興味をもちました。父は朝遅く仕事に出て夕方には帰ってくる生活で、夜はほとんど家にいたので、昔から、父のように自由に時間が使える仕事につきたいと思っていました。

photo勉強はお好きでしたか?
 高校時代までは数学と世界史が好きでしたが、理科は苦手でした。理科というのは、複雑で多様性のある自然現象を相手にするため未解明のこともあり、数学のように厳密な理屈が成立しないことが多く、教科書の説明にどこか「ごまかし」を感じていたためです。丸暗記しなければいけない部分もあって、無味乾燥に思えたんですね。当時、予備校の先生にその疑問をぶつけたところ、「なぜかと聞かれてもわからない。実験でそうなるので認めるところから物理は始まるんだ」といわれたことを覚えています。
 ところが、高校3年生の時に近所の図書館で、『X線からクォークまで』という本を借りて読んで以来、物理が好きになりました。これは、複雑に見える自然現象を相手に個性的な物理学者達がぶつかり合いながら、どのようにして20世紀を代表する学問である「量子力学」という美しい学問体系ができたかを躍動的に描いた本です。登場する物理学者がみな個性的できわめて人間臭く、こういう人たちと友達になって一緒に仕事をしたいと思いました。また、複雑でわからない自然現象を相手にするからこそ、自分の個性を発揮して自分のアイデアで活躍することができるということを理解しました。