新板 窮理図解

どういうきっかけで画像の研究に進まれたのですか?
 ラグビーでの大けがもあって、理論物理系の科目を理解するのが難しいと感じていた大学3年生のときに、後に指導教員となる橋本周司先生の「計測原論」という講義を受けて、計測の奥深さを感じ、興味が一気に理学から工学へと移っていったのです。橋本研究室では顔画像処理やヒューマノイドロボットの研究などを行っており、応用物理学科のなかでは異色の研究室だったことも魅力でした。一方で、橋本先生の研究室はたいへん人気が高かったため、もし院試(大学院の入試)に落ちたら就職してもいいかなというくらいの軽い気持ちでもいました。ラグビー部の先輩たちの中には商社に就職した人も多かったですし、人と話したりお酒を飲んだりするのも好きで、体力には自信があったので、商社の営業マンになるのも悪くないかな、と思っていたのです。
 結局、無事に院試に通り、大学院では顔画像認識・合成に関する研究に取り組みました。たとえば、受け口の歯科矯正の手術前と後の顔の見え方の変化や歯の噛み合わせを画像でシミュレーションして示すといった研究です。
 この成果を日本顔学会で発表したところ、九州大学の歯学部の教授に興味をもっていただき、共同研究が始まりました。九大との共同研究は、ドクター論文、さらには芝浦工大に行ってからも続きました。早くからこうした共同研究や画像グループの学生の指導ができたことは、いい経験になりました。
 その後、早稲田大学で博士を取得して助手まで務め、2002年に結婚とほぼ同時に芝浦工大情報工学科に専任講師として赴任しました。芝浦工大では、初年度から10名の学生を指導し、在籍した2007年度までに約80名の学生を指導しました。当初は大学院に行かない学生がほとんどでしたが、学内外の研究室との合同研究発表会を企画したり、研究費獲得のために共同研究を仕掛けたり、研究の体制づくりに奔走した結果、7割くらいが大学院に進学する研究室に育て上げることができました。ちなみに、合同研究発表会は現在も継続しています。

2008年度から慶應義塾大学にいらしたわけですが、いかがですか?
 慶應と早稲田は同じ私学として切磋琢磨してきたせいか、共通点が多いですね。あえて違いを言うと、早稲田に比べると慶應のほうが、良くも悪くもきちんとしている印象があります。後輩を大事にするところはとてもいいですね。また制度も整っていて、そうした制度を活用してうちのドクターの学生5名中3名が海外留学を経験しています。

ご多忙ですが、息抜きはどうされているのですか?
 小学校4年生の息子と年中の娘がともに柔道をやっていて、子どもたちにまざって、週に一度、私も柔道をしてストレスを発散しています。ちなみに、子どもの柔道の試合はすべてビデオで撮影して、映像編集、戦術解析をしているんですよ(笑)。いずれ、柔道をしているときに身体の重心がどこにあるか、画像で自動的に解析するような研究もやってみたいと思っているところです。

どうもありがとうございました。

◎ちょっと一言◎
学生さんから
熱血漢で厳しい一面もありますが、つねに学生のことを真摯(しんし)に考えてくれる素晴らしい先生です。とくに僕たちが研究しやすいように、これ以上にない環境を整えてくださっています。先生ご自身もラグビーをされていましたが、『スクール☆ウォーズ』の滝沢先生そのものです(笑)。研究の楽しさ、厳しさ、さまざまなことを青木先生から学んでいます。

(取材・構成 田井中麻都佳)