慶應義塾大学理工学部 広報誌
  新版 窮理図解  
08 大村 亮 2 Sloan教授に出会い、クラスレートハイドレートの研究を本格化

クラスレートハイドレート研究に取り組んだきっかけは。
 大学4年の時、森康彦先生の研究室に入ってからです。当時、森先生は伝熱(熱伝達)の研究をされており、そのテーマの1つがクラスレートハイドレートでした。当時から面白い事象とは思っていましたが、それ以上のことは考えていなかったように思います。その意識が変わったのが、米国のコロラド鉱業大学のE. D. Sloan Jr.教授と出会ってからです。
 Sloan先生はエンジニアリングの世界においてずば抜けた業績を持つハイドレート研究の第一人者で、私が修士課程の学生だった時に先生を招いた特別講座がここの理工学研究科で開講されました。2カ月という短い期間でしたが、クラスレートハイドレートを専門に研究されてこられたSloan先生から体系的な知識を学べたのは素晴らしい経験でした。  それまで私がしてきたクラスレートハイドレート研究は、伝熱工学分野からの1つの展開の域を出ない研究でしたが、Sloan先生と出会ったことで基礎的な物性についても深く知ることができました。論文を通してではなく、先生を目の前にして直接に教わることで気付いた驚きや可能性は、私自身のその後の研究の方向性に大きな影響を与えたと思っています。
 学位取得後もクラスレートハイドレート研究を続けようと考えていたとき、産業技術総合研究所(産総研)のハイドレート分野で若手研究者を求めていることを知り、早速応募しました。産総研のプロジェクトで一緒になった先輩研究者たちは応用物理の専門家が多く、物性の見極めを目標に研究を進めていくというスタイルが主流でした。エンジニアリングの視点を重視する機械工学出身の私にとって、応用物理からのアプローチは新鮮だったことを覚えています。産総研には4年間在籍しましたが、その間、エンジニアリングの視点で対象を見つめながらも、応用物理的なファンダメンタルな研究もするというエンジニアリング・サイエンスを実践できたことは今につながる貴重な経験でした。

photoその後大学に戻られたとのことですが、
何か思うところがあったのですか?

 実は学生の頃から、自分の性格を考えると、人を励まして力を引き出すような仕事の方が向いていると思っていたのですが、産総研に勤めてそのことを強く意識するようになりました。
 産総研の研究者は部下や臨時職員と一緒に研究することもありますが、基本的には自分自身の研究に邁進するというタイプがほとんどです。ところが私は、学生と一緒にあれこれ考え、社会のために、大学のために、何より将来を担う学生を育てたいと思うようになり、大学から舞い込んできた専任講師の話をチャンスと捉え、教員という道を選びました。自分では厳しい面も持ち合わせつつ誉めて伸ばすタイプの教員だと思っています。学生には、怖い教員として通っているようです……この点は自分でもある程度は納得しています。

 

 

1 父親のアドバイスで 理工系に進学する
2 Sloan教授に出会い、クラスレート ハイドレートの研究を本格化
3 ジョギングで気分転換し、 学生の力を引き出す努力を
Profile 大村 亮 機械工学科 准教授 専門は熱工学、物理化学。現在の研究テーマはクラスレートハイドレートの物理化学、ならびにエネルギー・環境関連技術の開発。基礎研究から実用を想定した応用研究まで幅広く展開している。2000年、博士(工学)を取得後、フランスでハイドレート研究に参画。2002年から独立行政法人産業技術総合研究所研究員。2006年に慶應義塾大学理工学部専任講師に着任し、2009年同大学准教授に就任。現在に至る。
 
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