慶應義塾大学理工学部 広報誌
  新版 窮理図解  
05 チッテリオ,  ダニエル 2 研究しやすい日本の環境

なぜですか?
 大学の研究室で実験したり、論文を書いたり、自由な発想で研究に取り組んでいたのに、会社に就職したとたん、そうした生活がなくなったら、急に将来に対して不安を抱くようになってしまったからです。やはり自分は研究者に向いていると思いました。
 実はそのときは、また日本に戻りたいと積極的に思っていたわけではないのです。ただ、すでに日本語が話せるようになっていたので、前回よりもやはり苦労が少ないだろうと思ったことと、慶應での4年半の研究生活がとても楽しく、よい印象をもっていたことが根底にはあったと思います。
 そんな折、鈴木先生から新しいプロジェクトのお話をいただいて、2006年に再び、特別研究助教授として慶應義塾大学理工学部に戻ってきました。2009年度からは、専任の教員(准教授)になりました。このときに、以前よりもキャンパスに留学生が増えていたのに驚きました。それだけ国際化が進んだということでしょうね。
 インクジェットプリンターによる紙のチップの研究には、2007年から取り組んでいます。慶應義塾大学は研究者にとって素晴らしい環境が整っている場所だと思います。

photo研究しやすい環境にあると?
 自分でプロジェクトの提案をし、それが通ったら、大学がサポート環境を整えてくれますし、それでいて自由に研究ができるのがいいところです。
 今は状況が変わってきていますが、それでも、日本は比較的、研究予算を取りやすい環境にあると思います。また、鈴木先生をはじめ、日本では研究者どうしの結びつきが強く、コネクションを大事にしているのはいい点ですね。自分の研究分野と離れていることを知りたい場合でも、ネットワークを通じて、誰かに相談できる環境にあります。
 一方で現在は、不景気の影響もあり、日本の学生の就職はとても厳しい状況にあります。せっかく海外留学をしたいと思っても、就職を優先して留学を断念する人もいます。残念ですね。

最近は、学生が留学に後ろ向きだという話も聞かれますが…。
 実際には、留学したいというモチベーションも機会もあるとは思いますが、今は、早く就職を決めておかなければという風潮が強いように思います。実際に国際会議に出て、外の世界に触れたことをきっかけに、留学を希望する学生もいます。もちろん英語のハードルは越える必要があります。積極的に国際会議に出るなどして、自信をつけてほしいですね。私自身、日本語を習得するのは大変でしたが、専門分野のセミナー、学会などに参加するなかで、専門用語を身につけることができたので、チャンスがあれば利用して欲しいと思います。

 

 

1 人生の幅を広げるために日本へ
2 研究しやすい日本の環境
3 どうして研究者を目指したか
profile チッテリオ,  ダニエル 応用化学科 准教授 既存の物質を組み合わせたり、全く新しい材料(色素、高分子など)を開発することにより、 産業・医療・環境分析への応用を目指した化学センサーおよびバイオセンサーの開発に取り組んでいる。スイス、チューリッヒ生まれ。1992年スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)化学科卒業、1998年同大学大学院博士課程修了。慶應義塾大学ポスドク研究員を経て、ETHZ助手に就任。その間、知的財産管理の修士を取得。その後、スイスの化学メーカーにて弁理士。2006年慶應義塾大学に戻り、2009年より慶應義塾大学理工学部応用化学科准教授、現在に至る。
 
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