慶應義塾大学理工学部 広報誌
  新版 窮理図解  
02 武田朗子 2 企業の研究員を経て母校に戻る

ゲスト写真2年後に、再び大学の研究室に戻られたのはどうしてですか?
 メーカーでの仕事はとても楽しくて、クライアントに喜んでいただけたり、自分の研究が製品や特許に結びついたり、とても充実していましたし、不満はありませんでした。
一方で、研究室では、研究仲間とお互いの研究テーマについて議論をすることができたのですが、会社では1人で仕事を任されている感じだったので、研究について同レベルで話せる仲間がいなくて、少し寂しい思いをしていたんですね。研究を続けられる状況にはありましたが、特許の関係などから自由に論文を書くことができないのもネックでした。
 ちょうど2年たった頃に、「東京工業大学の助手のポストに応募してみたら?これが研究者として大学に戻れるラストチャンスだよ」と言われ、決心をしたのです。
 このときまで、私は自分が研究者でやっていけるとは思っていませんでした。自分は天才肌じゃないし、向いてないんじゃないかと……。研究に専念しようと思ったのは、会社を辞めて大学に戻る決心をしたときですから、今から6~7年前。そう考えると、わりと最近ですよね(笑)。

さらに、東京工業大学の研究室から慶應義塾大学に移られたわけですね。
 慶應義塾大学に戻ってきたのは、2年前です。ちょうど東京工業大学の研究室に任期付きのポストで戻るときに結婚したのですが、夫が現在、都内の大学の研究者をしているので、同居しようと思うと首都圏の大学にしか移れなくて……。そんな折、ちょうど慶應の公募が出たので、応募したのです。思いがけず母校に戻ることができて、とても嬉しかったですね。

ご主人も同じような研究をされているのですか?
 ええ、同じくORの研究者で、共同研究もやっています。よく人に、夫婦で共同研究なんかしてけんかにならないの?と聞かれますが、いつも夫が折れてくれるのでけんかにはなりません(笑)。しかも、夫は金融工学が専門なのですが、私が理論を担当するといった具合に、役割分担ができているので、けんかにならないんですね。ちょうど今も2人で論文を書いていて、仕上げの段階です。家でもよく、研究について議論したり、相談したり、お互いにいい刺激になっています。

ご夫婦で仕事のことや、研究のことを互いに理解して、話し合えるなんて素敵ですね。
ところで、現在、大学ではどんな授業をもっていらっしゃるのですか?

 大学2~3年生を対象に、数学のほかに、私の専門であるORの授業を担当しています。それから私の研究室には、大学4年生が6人在籍しています。
 東京工業大学で助手として在籍していた研究室は世界的に有名で、博士課程の学生や留学生も多かったのですが、現在の私の研究室は立ち上げたばかりですし、半数くらいは学部だけで卒業する学生なので、ある意味、現在は仕込み段階といったところです。ようするに、学生たちがちゃんと論文を書けるよう、いずれ一緒に共同研究ができるように、育てている段階ですね。
 修士課程を含めた3年間でみっちり研究をしたいという学生には最新の研究テーマを与えて、つねにディスカッションを心がけています。一方で、学部で卒業する学生には、研究を楽しんでもらいたいと思っていて、彼らがやりたいことや興味のあることをできる限りサポートするようにしています。
 たとえば、ダーツが得意な学生の場合は、趣味を発展させてダーツの最適化の研究をしていますし、フルートを趣味にしている学生は、戦火で失われてしまった楽譜の一部をどうやって復元するか、最適化の手法で研究したりしています。

 

1 落ちこぼれの小学生が一転して 研究者に
2 企業の研究員を経て 母校に戻る
3 「最適化法」をより多くの人に 知ってもらい役立てたい
profile 武田朗子
管理工学科 専任講師 不確実性を考慮した最適化技術の開発に従事。最近は、金融工学や統計的機械学習分野における最適化問題を効率よく解くためのアルゴリズムの開発に取り組んでいる。2001年、博士(理学)を取得後、(株)東芝 研究開発センター 研究員、 東京工業大学情報理工学研究科 助手を経て、2008年より慶應義塾大学理工学部 専任講師、現在に至る。
 
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